ゆる農ライフ

with農をテーマに生きる日々。雑記。

【10aから始めるブドウ栽培記1】何故ブドウ。されどブドウ。

 

葡萄を栽培することに決まったのは確か去年か、もしくは一昨年の事だった(覚えてない)。

父がそろそろ役職定年を迎えるということで、給料の減額に伴い家のローンが残っているゆえ何かで補填しなければ、という不順でありきたりな理由で葡萄を栽培することが決まった。

正直葡萄であることにこだわりのある人間は一人もいなかったし、今でも葡萄を選んだことに頭を悩ませることがある。あぁ、トマトでよかったじゃない。。。

栽培地は祖父母が十数年放置していたトマトハウスが未だに残る廃墟と言っていい場所だった。何かの動物の白骨死体を目撃し生き物の死に絶える場所と言うイメージだった。そして近所の人いわく、この辺の畑は葡萄に適していない。

道理で梨畑に囲われているわけだ。と思いつつ何故か引くことのない父に、トマトにしておけば…とは口が裂けてもいえない娘。

正直娘はこの荒れ果てたハウスの残骸をどうにか人に修繕してもらえないかという腹黒い思いを抱えていた。ブドウなどはどうでもいい。失敗したっていい。最後にハウスさえ残れば…。

 

葡萄を栽培しようと決めた初年度、私と父は大きなミスを犯し、3万円近くをドブに捨てることとなった。

理由は単純明快で、ブドウの苗木を20本近く購入して全て枯らせたのだ。

何故枯れたのか、というと根域制限と言う難しい栽培方法に手を出した上に水やりを怠ったからである。そう、言い忘れていたのだがこのハウスは拠点(祖父母の家)か離れている上に水が出る場所が無いのである。致命的だった。誰もが娘がマメに水遣りをすることを望んだ。しかし娘は怠った。わかって欲しい、それが娘の人間性である。

果樹は作付けを焦ってはいけない。充分に熟考した上でどんな栽培方法で何を作るのか、そしてそれは栽培者に向いた栽培方法なのかを見極めるべきだった。

 

 

そしてその次の年、熟考に熟考を重ねた上、沢山の資料と、ぶどう園の訪問をし、本格的にブドウ栽培を始めることとなった。ここからが本当のブドウ栽培の始まりである。

まず行ったのは、ハウスの修繕と水場の確保だった。

10年野ざらしにされたハウスに再びビニールを張るのは容易なことではなく、大学生であるにもかかわらず比較的ゲームをして過ごしている弟に手伝いを頼むことになった。

ハウスの錆を落とし、ペンキを塗る…。外は真冬で凍える寒さの中の作業だった。12月から毎週のようにペンキを塗って終わったのが3月を過ぎた頃だった。

4月にはビニール、張りたいよね。なんて言ってはいたが、ビニペットの錆具合から交換をよぎなくされ、昔のハウスによく使われた青いアーチが死ぬほど錆びていたのですべてにテープを貼り付けてビニールが切れないようにする他なかった。

 

そんなことをやっている間にブドウの植え付け時期がやってきた。

 

ブドウに向いていない畑でどうやってブドウを栽培しようというのか、というとやはり以前失敗した根域制限栽培しかなく、二度目はないぞ、と枯らさないように水場を近くに作ることが絶対条件となった。

水場は思ったより簡単に手に入った。祖父母が田んぼに使っていたポンプをブドウに回せるように加工するだけだった。しかし栽培地は-10度にもなる場所で、何気なくあけたポンプに途中のバルブが破裂したのだった。事の犯人は父である。

ここまで幾度もの金をつぎ込んでいた父が、いろんなストレスを抱えていた父が、泣いた。

男泣きである。

かっこいい。もんじゃない。

情けない、娘は思った。

父は涙と修繕費を支払い、水場は確保された。これで前年のような失敗はするまい。

 

そしてやっとのことで植えつけに入った。

娘は根域制限用に、透水遮根シートのロールを徹夜で加工することとなった。

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この棺おけのようなものの中でブドウ栽培は行われる。寝心地はとても良いのでブドウも満足してくれるはず。

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まだ寒い時期、赤玉土とバーク堆肥と微量要素もろもろの中に苗木を植えた。

土中に伏せこんでいた苗木は何本かネズミにかじられていた。ブドウの苗木は安くない。その辺に売っている苗木とプロが買う苗木の値段の差は3倍にも及ぶ。

嫌な出来事に家族一同芽は出るのかと不安と不安と不安しかない状態であった。

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しばらくしてさくっと萌芽したシャインマスカット。

一同安堵の表情である。

 

6月の梅雨前、やっとこさハウスにビニールをはる事が出来ました。

いろいろな苦労がありましたが、これからが本番です。